REPORT[レポート]

bioRe Night -Simon Hohmann Presentation- 後編

 

2019年11月22日、パノコトレーディング のメインサプライヤーでもあるREMEI AGのCo-CEO Simon Hohmann氏をお招きし、【 bioRe Night 】が開催されました。

後編は、Simon氏質疑応答の内容です。

前編はこちら>> bioRe Night -Simon Hohmann Presentation-前編

 


 

三保:REMEIとbioReが行っている、サステイナブルな取り組みがご理解いただけるようなお話しだったと思います。ここからはより突っ込んで、深掘りをできたらと思っています。サステナビリティとトレーサビリティについて、6つほど質問を用意してきましたので、サイモンにお聞きしたいと思います。

 

三保:まずサステナビリティについて、一つ目の質問です。最近日本でもSDGsという言葉が盛んに叫ばれるようになってきました。この言葉がこれだけ注目される遥か以前からREMEIはサステナブルなことをされていらっしゃるので、REMEIからすると何を今更というところがあるかもしれませんが、非常にわかりやすいマップになっていますので、現時点においてREMEIがこのマップに照らし合わせた時に、どの程度の取り組みをしているのか、その現在地をちょっと教えていただければと思います。

 

 

 

サイモン:SDGsの17個のゴールがありますが、これは私の記憶が正しければ国連で2014年から呼び掛けられている物だったと思います。私たちREMEIとbioReはこういったことを20年以上も前から取り組んでいます。SDGsの意識が高まってきて、私たちだけではなく、これを世界全体が取り組むべき価値ある目標だと思い始めたことはすごく重要なことです。様々な多くの企業がこれを取り組み始めたこともすごく意義のあることだと思います。まず1番、「貧困をなくそう」という点について、先にお話しした通り、プレミアム価格で農家からコットンを買い取っていることや、購買保証をしている。先ほどざっくり50万ドルの上乗せできたとお話ししましたが、もう少し細かく計算してみると60万ドルくらい払えているのではないかと思います。私たちは何か素晴らしいことをやっているのではなく、単純に労働に見合うお金を支払っているだけなのです。農家の人たちとの本当に公平な関係を作れているだけだと思っています。労働に見合うお金が支払われれば、農家の人たちが自分たちの判断と考えで「今年はトラクターを新しくしよう」と思ったり、「部屋を大きくしよう」といった、判断をできるようになります。お金を払うと言うことは、人々をエンパワーする、彼ら自身に知識を与える、考える力をあげることだと思います。こういったことを、私たちのプロジェクトでは可能にできていると思います。

次に、3番目の「すべての人に健康を」という項目ですね。これは人々にとってすごく根本的に必要なものだと思います。先ほどもお話しましたが、タンザニアではまだ飲み水が足りていない。インドではトイレが足りない。井戸やトイレを作るということは、人々の基本的なニーズである、健康をサポートすることにつながっていると思います。

4番目の「質の高い教育をみんなに」というところですが、やはり教育というのは何にも増して重要なことだと思います。全ての人に充分な教育がなされれば、経済が上がる可能性が高くなりますし、より良い仕事を得るチャンスが増えます。教育というと学問的なことばかりを考えがちですが、健康にも大きく関係していると思います。衛生とは何か、どういう物を飲めばいいのかといった、生きていくための知恵をつけることもできる。教育が間接的に健康にも関わってきます。

6番まさに「水」ですね。先ほどの話にもあったように、タンザニアでは私たちが作った井戸と貯水タンクで、60,000人以上の人たちに綺麗な水を提供できていると思っています。

13番、「気候変動に具体的な対策を」という目標があります。これに関して私たちがやっていることは、糸を作る全ての過程の中でカーボンニュートラル、つまりは二酸化炭素を排出はするけれども別のところで削減もするという、プロジェクト全体で見た時にプラスマイナスゼロにするということを目標にしています。例えばインドでは、3000のバイオガスプラントをつくることができています。タンザニアでは3000の煙が出ないオーブンを作って貢献しています。

 

 

三保:続いての質問です。オーガニックコットン以外にもリサイクルポリエステルのような再生性繊維、生分解性繊維、いわゆるサステナブル素材というものがあらゆるところで採用されるようになってきました。そういった素材とオーガニックコットンを比較した時に、オーガニックコットンの優位性がもしあれば教えてください。

 

サイモン:ご質問ありがとうございます。世界の中で大変多くの企業がどのような形でオーガニックコットン、もしくは再生マテリアルを使えるのかを考え始めていると思います。本当にいいことだと思います。企業が社会的に良いことをしたいと考えることは歓迎されるべきことです。例えば、リサイクルポリエステルのことをお話しすると、世界的にも有名なアディダスというブランドが、海洋プラスチックを回収し、それを作り替えて靴にするという取り組みをしています。素晴らしいことですし続けて欲しいと思っています。ただ、忘れてはいけないのは、リサイクルポリエステルが服に使われた際、洗うたびに実は細かい繊維が水に混ざり出て、それは最終的に海にいきつくのです。大きな回収できるプラスチックから商品にしたところで、結局違う過程を経て、最終的にはマイクロプラスチックとして海に戻ります。そういったサイクルがまだまだ行われていることを忘れてはいけません。もう一つ生分解性繊維も例に挙げていただきました。これをつくる過程の中で、たくさんの木や竹を使用しています。そこで多くの企業は木や竹を取りすぎて森を無くしてはいけないので、それを防ぐ取り組みも併せて行っています。ですがここで忘れてはいけないのは、生分解性繊維をつくる過程で、たくさんの化学物質を使わなければいけないと言うことです。一方で、みなさんがパノコさんの生地で作った服を手に取っていただくと、必ずしも漂白していなかったり、染めていないものあったり、それを作るまでには極力化学的な物質を使わないで作られています。生分解性繊維で服を作ることもいいことですが、それが製品に至るまでに多くの化学物質が使われているのです。それよりは、オーガニックコットンを使用して、なるべく化学的処理を行わないで商品をつくる方が良いのではないでしょうか。

 

 

三保:それでは、三つ目の質問です。日本だけでなく世界的にサステナビリティという機運が非常に高まっています。ですが一方で、それを自社の事業の中にどのように取り入れ、またどのように表現していったらいいのか、悩みを抱えている事業者が多いように感じます。そこについて、何か成功事例、その他含めいいアドバイスがあれば、教えてください。

 

 

サイモン:世界を変えていくためには、私たち含む世界中の全員が新しいことを始めなければいけません。そんな段階にもう入っていると思います。一つ、とてもいい話を共有したいと思います。これは私が考えた話ではなくて、ケニアのある人から聞いた話です。ハミングバード(蜂鳥)と言う、とても小さい鳥がいて、その鳥は森に生息しています。あるときその森が火事になってしまいました。他の動物たちは火事で森がどんどん燃えていることに唖然として、ショックを受けて、どうすればいいかもわからず、森を見つめたまま何も行動が起こせなかったんです。でもその時、小さな蜂鳥たちは、「何かできることがあるかもしれない」と言って、自分たちの小さなクチバシで、川に行って一滴の水を持ってきて火にポトッと落とす、また川に行っては水を運んでポトッと落とし、一滴ずつの水でその火事を食い止めたという話があります。蜂鳥の何倍も大きな象がきて、「君たちは一体、さっきから川に行ったり森に行ったり、何をやっているんだ」と聞いた時に、蜂鳥は「私たちは目の前で起こっていることに対して、私たちができるすべてのことを一生懸命やっているんだ」と言いました。結局“これ”なんだと思います。私たちも目の前にあることを大きく感じるかもしれません。私たち一人一人にできることは小さいかもしれない。けれどそれをみんなが取り組んだら、何億人といるこの地球上の人々でできないことなんてあるでしょうか。私の父の話と関連付けると、何気なく農家の人と話している時、彼らの置かれた立場がわかって、その状況を変えたいと思いました。そして、その「何かを変えたい」「何かできるんじゃないか」ということを信じて、忍耐力を持って、少しずつ、少しずつ取り組んできたのです。そうすることで、持続可能な方法にたどり着くことができたのです。それまでの、誰かの幸せを蔑ろにしたコットンの栽培・流通でなく、オーガニックコットンの方向にたどり着けました。この話も一例として覚えておいていただけたらと思います。

 

 

三保:ありがとうございます。次に、トレーサビリティということに関して2つほど質問があります。まず、作り手側、例えばメーカー、お客様、ユーザーへ、透明性を開示することによって得ることができるインパクトは何だと思いますか?

 

サイモン:トレーサビリティは、昨今とても重要になってきていると思います。REMEIはずっとそれを信じてやってきましたが、今では私たちだけでなく大きな企業もサプライチェーン中での透明性を示そうとしています。これはとても良い流れだと思います。同時に、お客様たち、消費者たちがどんどん知識を得ていて、どこでその物が生まれて、どのようにして自分の手にわたってきたのかを知りたいと思うことが多くなってきているのだと思います。それぞれの物のルーツや、どんな背景があるのかに、より興味を示し始めているのです。例えば、リサイクルポリエステル。「まあリサイクルされてれ入ればいいよね」と思う反面、それの利点だけでなく欠点を考える人も多くなってきているのではないでしょうか。最初から最後、サプライチェーンのすべてのプロセスを知る。それが物を選ぶ基準になってきている。それはすごく透明性ということにおいて重要なキーポイントになると思います。

 

 

三保:最後に、先ほど見せていただいたbioReのトレーサビリティツールがありましたが、それを運用していて、実際に顧客・エンドユーザーからのリアクションはどのようなものがありましたか。

 

サイモン:先ほど、服それぞれに固有のQRコードをつけるというものを紹介しました。あれを始めて少し経っているんですが、正直なところエンドユーザー・消費者からのアクセスはそれほど多くありません。ですが私たちは確信していることがあり、B to B、ビジネスパートナー同士の間では、これに関してとても関心・興味が高まっています。QRコードを示すことで、売る側が透明性を証明できるんだ、という証拠になると認識され始めています。私はこれを悲観的に解釈はしていません。まずは売り手側の関心を高めることが大切です。売り手の関心が高まれば高まるほど、消費者やエンドユーザーたちの関心もより高まっていくはずなので、今いいところにいる、本当にこれからの事業だと思っています。

 

三保:ありがとうございました。どなたか、他に質問がなければ、これで終わりにしたいと思います。この後も、歓談の時間となりますので、何かご質問あればどんどんサイモンさんに直接聞いていただければと思います。みなさまご清聴いただきありがとうございました。