REPORT[レポート]

bioRe Night -Simon Hohmann Presentation- 前編

 

2019年11月22日、パノコトレーディング のメインサプライヤーでもあるREMEI AGのCo-CEO Simon Hohmann氏をお招きし、【 bioRe Night 】が開催されました。

 

 

 

―Simon Hohmann (サイモン・ホフマン)―

オーガニックコットンの原糸およびテキスタイルのサプライヤーとして、関わる全ての人々にとって価値ある経済的で構築的なアプローチを常に追求しているRemei社を率いる若き代表。

グローバル経済をより良く変革していくためにはイノベーティブな構造改革が必要だと考えている。

 

 

 

 

 

その中で行われた、Simon氏のプレゼンテーションの内容です。

 


 

 

 

みなさま、足を運んでくださりありがとうございます。本日は、オーガニックコットンについて単純にお話しするのではなくて、いかに私たちが社会に対して責任を果たしながらプロジェクトを行なっているのかということをお話しできたらと思います。そのお話をするとなると、私たちはどこから始まって、今何をしているかということに話が及ばなければいけません。

 

 

まず、私の父が1983年にREMEIをはじめました。彼はオーガニックではない普通の糸の輸入業者として、アフリカやインド、パキスタンなど、世界中の国々を周っていました。その時彼はオーガニックコットンとはなんなのか、それがどういう影響をもたらすのか、ということにはあまり関心がありませんでした。

 

彼は、1980年代後半にターニングポイントを迎えることになります。それはインドに行った時、偶然コットン農家の人と話をしたことでした。農家さんに「1年でどれくらいの利益があるのか?」と尋ねたところ、「ほとんど利益はない」と言ったのです。私の父は大変驚きました。そのビジネスがどのようにして回っているのか理解ができず、それから農家の人たちがどう働き、どのような状況なのかを考え始めました。この出会いが私の父の人生を大きく変えることになりました。

 

 

彼は、インドの農家の人たちの人生を少しでも良いものにするために何ができるのかを真剣に考え、取り組むことに決めました。コットンが世に出回る過程には、綿を作って、糸にして、染めて…と、たくさんの工程がありますが、全ての工程でそれぞれお金がかかってきます。私の父が糸を販売するだけでは農家の人たちにより良いお金を払うことはできません。糸の売買だけでなく、全ての工程で何かを変えなければいけない。今、明らかなのは何かが間違っているということ。彼はそれに気がついたのです。そして試行錯誤の中で彼は、オーガニックファーミング、オーガニックの物を作るという方法に行き着きました。そのオーガニックで物をつくるということは、最終的には、より少ないお金でより良い物ができるということを発見したのです。

 

その頃から私の父はパイオニアとしての存在感を増したのではないかと思います。当時、インド・タンザニアではオーガニックコットンの生産をしている農家は、全くありませんでした。その中で、私の父は本当に一掴みの農家の人たちとオーガニックコットンの栽培を始めました。本当にサステイナブルな、持続可能な方法による栽培です。その当時からの方法、哲学は今でも受け継がれています。私たちは、私の父が始めたように、農家の人と同じ目線で、同じ視点に立って、話し合い続けるということを、続けていきたいと考えています。

 

 

私たちREMEIは、この間違いを正すには何が必要なのか、一体何が問題なのかをずっと考え続けてきました。わかったことは、全てのサプライチェーンの中で一番先端の人々、つまりは農家の人たちが、最も弱い地位にあるということです。様々な工程がある中で、それぞれの工程で利益を出していくためには、元々の値は安い方が良い。それが理由で原料が買い叩かれているのです。そこで私たちは、チェーンの一番先端にいる農家の人たちに対して何ができるかを考えて、プレミアム価格を導入しています。これは、農家からコットンを買い取る時に、通常の価格よりも上乗せして買うことを言います。そして、ある程度の質を担保してくれさえすれば、必ず一定の量買い取りますよという保証をする。この二つのことを始めました。コットンの値段は激しく乱高下する物です。安い時には、売り手にはほとんど利益がなく、高い時には買い手がつかないので、結局売れない。どちらにしても農家の利益にはならないのです。ましてや、インドやタンザニアから遠く離れたニューヨークの先物市場で価格が決められるなんて、理不尽ではないでしょうか。

 

そんな農家の人たちを守るために、私たちはプレミアム価格と購買保証をしています。よく、「プレミアム価格っていくら?」と質問を受けますが、これは過去5年間の規定された値段の平均値をとって、そこに15%上乗せして価格を決めています。生産者が見合ったお金をもらうことができる。それこそが私たちの考えるフェアトレードです。購買保証があることで農家の人たちも安心してコットン作ることができます。例えば今年2019年タンザニアは気候的にも環境的にも大変難しい状況でした。タンザニア政府が買い取る時の価格を決めますが、それがとても高く決められてしまったのです。買い手としては高いから買えない。一方で、ニューヨークでは、この10年で一番低い価格がつきました。売る方としては利にならない。その中でR E M E Iは8月に買い取ることを約束しているので、約束通り全てのコットンを買い取りました。

 

こういったことを農家の人々に提供し続けられることは本当に嬉しいことです。私たちの活動の裏側には、みなさんやパノコのように、私たちから製品を買ってくださる方が居続けるから、私たちはそれをインドやタンザニアに還元することができています。この事業を続けられていることは皆さんのおかげです。

 

 

農家の人たちに、見合ったお金を支払うシステムを運用すると同時に、もう一つ私たちがやらなければいけない、やる必要があると感じているのが、農家の人たちが属するコミュニティーの支援です。コミュニティーを支援することによって、農家の人たちの人生をより良くするサポートをしています。それにはどんな方法があるのかを考えた時に、私の父は5つのことを考えつきました。その5つとは、教育、健康、農家の人たちの労働環境、どのように開発・発展していくのか、そして地球環境のこと。5つを全部詳細に語っていると長くなってしまうので、中でもとても重要な教育と、健康のところに焦点を当ててお話ししたいと思います。

 

 

特にインドです。この写真にもありますが、インドで私たちと契約している農家のほとんどはかなり田舎にあり、子供たちは学校へ通うことができません。そこで私たちは学校をつくりました。今までに23校の学校を作っており、1300人以上の生徒がそこで学ぶことができています。ここで子供たちが教育を受け、知識を得られるということはもちろん大切ですが、そこにはさらなるメリットもあります。まず、読み書きができるようになります。また、保護者たちが子供を学校に送り込むことで、児童労働が減るといういい面もありました。

 

 

同じくインドの話ですが、人々の健康を維持することもすごく大切です。この右側の写真は、インドのトイレです。トイレのない地域がたくさんあるので、私たちはこういったトイレをたくさん作っています。それはもちろん全ての人に有益なものですが、特に女性や子供の健康を維持するのに役立っています。

 

この写真の左側は、一見普通のバスに見えますが、これは医療バスです。中には様々な医療機器があり、レントゲン撮影もできるようになっています。医者を乗せて、各コミュニティーを廻り、病院にいけないたくさんの人々の健康チェックをすることができるようになっています。ここまでインドでのコミュニティー支援を紹介してきました。一方のタンザニアではもう少し違った社会的課題があります。

 

 

 

タンザニアでは、安全で綺麗な水の確保がまだまだ難しいのです。私たちは今までに118の井戸、38の貯水タンクを設置してきました。左の画像が貯水タンクです。これは公立の学校に設置したタンクで、その学校の生徒たち、そしてその周りの住民たちに安全な水を提供しています。右側が井戸の写真です。これを各村に設置しています。例えばですが、井戸が一つできると、十家族くらいに水を提供することができると言われています。タンザニアでは、8、9人の子供がいますので、一家族10人くらいが一般的です。その十家族ですので、井戸一基でおよそ100人の人に安全な水を提供することができているのです。

 

コミュニティを支援することは本当に大切なことです。これを可能にしてくれているのは、パノコやみなさんです。みなさんが商品を買ってくださって、資金提供してくださっているから可能になっているのです。このつながりを忘れないでください。

 

 

 

また別の話ですが、インドではリサーチ・研究を始めています。インドにおいては、遺伝子組み換えでない種を探すことがものすごく難しく、ほぼ不可能な状況です。そこで私たちは、2010年から独自の遺伝子組換えではない種を作るというプロジェクトを始めました。いい種を選んで、それを増やしてということをやってきました。今は遺伝子組換えでない、オーガニックコットンの種という物をつくることに成功しています。

 

遺伝子組み換えでない糸を作るというのは、言葉にするのは簡単ですが実際はものすごく大変なことです。全て工程で、何度も何度もテストをしていかなければいけません。まず種の時点で遺伝子組み換えでないか。そして土地は遺伝子組換えの汚染をされていないか。葉っぱが出てきたところで、それもテストする。繊維になったところでもテストをする。工場の各過程でもテストをします。全ての段階でテストをして、大丈夫だった物のみが遺伝子組換えではない製品と見なすことができるのです。様々な工程の中で、一つでも遺伝子組換えが見つかってしまうと、ちゃんとしたオーガニックコットンとは言えません。製品に至るまでたくさんの機械を使いますが、その機械の一つ一つもその都度綺麗に清掃していかなければいけません。

 

 

次に私たちが課題として取り組んでいることはトレーサビリティです。どのようにしてその製品ができたのかがわかる、調べられるということです。全体の流れを管理することが重要です。種ができ、そこからコットンができて、糸になり、様々な工場を通過して、最終的に商品となります。商品を手にした時に、どういう経路をたどり出来上がったのか、全てわかるようにしたいと思っています。その方法として、写真のように、商品にQRコードを付けています。そのQRコードを読み取ると、そのTシャツが、インドのどのような工場で作られて、さらにはタンザニアの農家が作ったコットンである、というようにどんどん遡ることができるのです。

 

 

最後に、数字でみなさんにご紹介したいと思います。これまでにお話ししたような取り組みを続ける私たちは、昨年4900、ほぼ5000軒の農家を支援することができました。そしてインドとタンザニア両方を合わせてコットンの収穫量は7000tとなっています。先にお話しした通り、プレミアム価格で農家の方々から買い取っています。昨年度は総額50万米ドル(2019/11/22現在5千432万5千円)を通常の価格に上乗せして農家さんにお支払いすることができました。

 

 

改めて、パノコトレーディングは、私たちの取り組みを長年にわたって信じてくださっています。私たちの信頼できるパートナーで居続けてくれることに感謝しています。おそらくパノコ が始まってかなり早い段階に私たちのパートナーとなってくれました。それが今まで続いている。これだけ長い間続いているのは、パノコだけではないでしょうか。

 

本日はこうしてお話をする機会をいただきありがとうございます。今私がお話ししたこと、紹介したことによって、みなさまがパノコから買っていただいた商品の後ろ側、製品に至るまでのお話しが、少しでもご理解いただけたら嬉しく思います。ありがとうございました。

 


 

後編はこちら>>bioRe Night -Simon Hohmann Presentation- 後編